譜割りは、歌詞の文字をメロディの音符ひとつひとつに割り当てる作業です。日本語はひらがな1文字(モーラ)がおおむね1音にあたるため、メロディの音符数と歌詞のモーラ数を合わせることが土台になります。そのうえで、単語の頭を強拍に置き、言葉の高低アクセントとメロディの上下を近づけると、歌詞が聞き取りやすくなるとされています。
メロディの音の選びかたはメロディの作りかたで扱いました。この記事では、できたメロディに言葉をどう乗せるかに絞ります。
モーラ — 日本語の「1音」の数えかた
日本語の歌詞では、音の長さの単位をモーラ(拍)で数えるのが一般的です。ひらがな1文字が1モーラですが、注意する種類が4つあります。
| 種類 | 例 | モーラ数 | 数えかた |
|---|---|---|---|
| ふつうの文字 | さくら | 3 | さ・く・ら |
| 撥音「ん」 | しんぶん | 4 | し・ん・ぶ・ん |
| 促音「っ」 | がっこう | 4 | が・っ・こ・う |
| 長音「ー」 | コーヒー | 4 | コ・ー・ヒ・ー |
| 拗音(小さい や・ゆ・よ) | とうきょう | 4 | と・う・きょ・う |
「ん」「っ」「ー」は文字としては独立していますが、音としては前の文字と一緒に1音へまとめることも、それぞれ1音に割り当てることもできます。ここが譜割りの自由度になります。拗音は「きょ」で1モーラなので、2文字で1音です。
音符の数とモーラ数を合わせる
4/4拍子で1小節を八分音符8つに分けると、置ける音は最大8つです。歌詞のモーラ数が音符の数と合っているかを、まず数えます。
| 1小節の分けかた | 音符の数 | 乗せられるモーラ数の目安 |
|---|---|---|
| 四分音符×4 | 4 | 4(ゆったり) |
| 八分音符×8 | 8 | 7〜8(休符を1つ入れると7) |
| 十六分音符×16 | 16 | 12〜16(語り口調に近づく) |
モーラ数が足りないときは、音を伸ばす(1文字に2音以上を当てる)か休符を入れます。多いときは、1つの音符を2つに割って文字を足します。どちらも手法として一般的で、同じメロディでもどちらを選ぶかで歌の表情が変わります。
| 対応 | 呼びかた | 向きやすい場面 |
|---|---|---|
| 1文字=1音 | シラビック | 言葉をはっきり届けたいAメロなど |
| 1文字=複数の音 | メリスマ | 母音を伸ばして歌い上げる部分 |
| 1音に2文字 | 詰め込み | 「ん」「っ」を前の文字に寄せるときなど |
拍の分けかたはリズムの基礎にまとめています。
単語の頭を強拍に置く
4/4拍子では1拍目と3拍目が強拍です。単語の頭(意味の切れ目)を強拍に置くと、聞き手が言葉の区切りをつかみやすくなるとされています。逆に助詞(「が」「を」「に」)が強拍に乗ると、意味のまとまりと拍がずれて聞き取りにくくなることがあります。
架空の歌詞「あさのひかりが」(7モーラ)を、八分音符8つの1小節に乗せる例です。
| 拍 | 1 | と | 2 | と | 3 | と | 4 | と |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 置きかた A | あ | さ | の | ひ | か | り | が | (休) |
| 置きかた B | (休) | あ | さ | の | ひ | か | り | が |
A は「あさ」の頭が1拍目、「ひかり」の頭が2拍目の裏に来ます。B は歌い出しを半拍遅らせ、「ひかり」が3拍目の強拍に乗ります。どちらも成り立ちますが、B のほうが「ひかり」という単語が立ちやすい形です。前の小節の4拍目裏から「あ」を歌い出す形(食い)もあり、こちらは前に転がる感触になります。
高低アクセントとメロディの上下
日本語は英語のような強弱アクセントではなく、音の高低で言葉を区別する言語です。共通語(東京式)では「雨」は「ア」が高く「メ」が低い、「飴」は「ア」が低く「メ」が高い、と区別されることがよく知られています。
メロディの上下がこの高低と同じ向きだと、言葉が聞き取りやすいと言われます。逆向きになると別の言葉に聞こえることがありますが、歌では旋律を優先してアクセントを崩すことも多く、どちらが正しいというものではありません。聞き取りやすさを優先したい箇所(曲名が入る部分、サビの1行目など)だけ合わせる、という使い分けが現実的です。
歌う人の音域に収まるかは別の問題として残ります。移調で調整する方法はボーカルの音域とキーの選びかたで扱っています。
作業の順番を並べる
- メロディの音符数を小節ごとに数える
- 歌詞をモーラで数え、小節ごとの数と比べる
- 足りなければ伸ばす・休符を入れる、多ければ音符を割る
- 単語の頭が強拍(1拍目・3拍目)に来ているか確かめる
- 曲名やサビの1行目だけ、高低アクセントと旋律の向きを比べる
先にメロディがある場合も、先に歌詞がある場合も、手順2の「モーラで数える」から始めると、どこがずれているかを表にして確かめられます。曲全体のどのブロックに言葉を多く置くかは、Aメロ・Bメロ・サビとはの構成と合わせて考えると整理しやすくなります。