キー選びは、曲の最高音・最低音と歌う人が無理なく出せる音域を、半音いくつ分ずれているかで比べると決めやすくなります。ずれた分だけ全体を上下にずらすのが 移調(トランスポーズ) です。
移調しても、コード同士の関係(度数)は変わりません。ダイアトニックコードの並びがそのまま平行移動する、と考えると整理しやすくなります。
まず2つの音域を測る
比べるものは次の2つです。
- 曲の音域:メロディの一番低い音と一番高い音。多くの曲では、最高音はサビ、最低音はAメロに出てくることが多いとされています
- 歌う人の音域:地声で無理なく出せる下限と上限。「出せる音」ではなく「何度も歌える音」で測るのが実用的です
音の高さは、ピアノの真ん中のドを C4 とする書きかた(国際式)で表すことが多いです。ただし中央のドを C3 と書く機材やソフトもあり、表記には揺れがあります。同じ基準で両方を測れていれば、比較には十分です。
半音で数えてずらす量を決める
オクターブの中の12音を、Cから半音ずつ数えると次のとおりです。
| 音 | C | C♯/D♭ | D | D♯/E♭ | E | F | F♯/G♭ | G | G♯/A♭ | A | A♯/B♭ | B |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Cから | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 |
例として、曲の音域が A3〜E5、歌う人の音域が G3〜C5 だとします。
- 曲の幅:A3→A4 が12半音、A4→E5 が7半音で、合計 19半音
- 歌う人の幅:G3→G4 が12半音、G4→C5 が5半音で、合計 17半音
曲の幅のほうが2半音広いので、上下どちらかははみ出します。最高音を合わせる(E5→C5 で 4半音下げ)と、最低音は A3→F3 になり、下限の G3 より2半音低くなります。
こういうときは、サビの最高音を優先するか、低い部分をオクターブ上げて歌う・ハモリに回すなど、どこを譲るかを決めます。低い音は小さく聞こえやすい一方、高い音の苦しさは曲の印象に直結しやすいため、最高音から合わせる方法がよく紹介されています。
移調するとコード名はこう変わる
コードもメロディと同じ量だけずらします。I–V–vi–IV(Cメジャーで C → G → Am → F)を例に並べます。
| キー | Cからの差 | I | V | vi | IV |
|---|---|---|---|---|---|
| A | −3 | A | E | F♯m | D |
| B♭ | −2 | B♭ | F | Gm | E♭ |
| C | 0 | C | G | Am | F |
| D | +2 | D | A | Bm | G |
| E | +4 | E | B | C♯m | A |
どのキーでも「I・V・vi・IV」という関係は同じです。メジャー/マイナーの区別も保たれます(vi は常にマイナー)。メジャースケールとマイナースケールの構造が、キーを変えても同じ形でついてくるためです。
ギターのカポと鍵盤のトランスポーズ
実際にずらすときの道具は楽器によって違います。
- ギターのカポタスト:1フレットにつき半音上がります。Cのコードフォームのままカポ2なら、鳴る音は Dキー。押さえかたを変えずにキーを上げられます
- 鍵盤・DAWのトランスポーズ機能:半音単位で出力をずらせます。弾く指はそのままで、鳴る高さだけが変わります
カポは基本的に「上げる」方向の道具です。下げたいときは、元より低いキーのフォームで押さえてカポで調整する、という組み合わせがよく使われます(例:Cキーから2半音下げたい → A♯/B♭ は押さえにくいので、Gのフォーム+カポ3で B♭)。
キーを決めたら、一度通しで歌ってサビを3回続けて歌えるかを確かめると、ライブ本番に近い条件で判断できます。曲の中でどこが一番高くなるかは、Aメロ・Bメロ・サビの構成と合わせて見ると把握しやすくなります。