転調とは、曲の途中でキー(主音とスケール)を別のものに切り替えることです。どの転調も「元のキーと移った先のキーで、何音が共通しているか」で聞こえかたの差が説明できます。共通音が多いほどなめらかに、少ないほどはっきり場面が変わったように聞こえます。
5つの転調をCメジャーから並べる
Cメジャー(C・D・E・F・G・A・B)を起点に、よく使われる転調先を並べます。「共通音」は、それぞれのスケール7音のうち、Cメジャーと重なる音の数です。
| 転調の種類 | 移る先 | 移った先のスケール | 共通音 |
|---|---|---|---|
| 平行調 | Aマイナー | A・B・C・D・E・F・G | 7音 |
| 属調(5度上) | Gメジャー | G・A・B・C・D・E・F# | 6音 |
| 全音上げ | Dメジャー | D・E・F#・G・A・B・C# | 5音 |
| 同主調 | Cマイナー | C・D・E♭・F・G・A♭・B♭ | 4音 |
| 半音上げ | D♭メジャー | D♭・E♭・F・G♭・A♭・B♭・C | 2音 |
上から下へ行くほど共通音が減り、切り替わりの印象が強くなります。
平行調と同主調 — 「近さ」の種類が違う
平行調(C ↔ Am)は構成音が7つとも同じで、調号も同じ(♯・♭なし)です。変わるのは「どの音を中心に感じるか」だけ。Am のダイアトニックコードは Cメジャーのものと同じ7つなので、コードを1つも変えずに移ることもできます。マイナー側に落ち着かせたいときは、Aハーモニックマイナーの V である E(E・G#・B)を置くと、Am に向かう力が加わります。
同主調(C ↔ Cm)は主音が同じで、3度・6度・7度の音が半音下がります。調号は♭3つ分変わります。ナチュラルマイナー同士で比べるとダイアトニックコードに共通するものがなく、両方をつなぐ役は G(Cハーモニックマイナーの V でもある)が担うことが多いとされています。1〜2個のコードだけを借りてすぐ戻る場合は、転調ではなく借用和音として扱います。2つの「近さ」の違いはメジャースケールとマイナースケールの違いでも整理しました。
半音上げ・全音上げ — サビの後半で使われる形
曲の終盤でキー全体を半音か全音持ち上げる転調は、J-POPでもよく使われる形とされています。
- 半音上げ(C → D♭):共通音は C と F の2つだけ。直前に新しいキーの V である A♭(A♭・C・E♭)を1つ挟むと、D♭ への着地がはっきりします。流れは「… G → A♭ → D♭」。
- 全音上げ(C → D):共通音は5つ。新しいキーの V である A(A・C#・E)を挟んで「… G → A → D」とつなぐのが基本形です。
どちらも、挟まずにいきなり新しいキーの I から始める方法もあります。その場合は切り替わりがより急に聞こえます。歌う側から見ると、半音上げは最高音も半音上がるので、ボーカルの音域とキーの選びかたの考えかたで上限を先に確認しておくと安全です。
共通コードを「橋」にする — ピボット転調
共通音が多いキー同士なら、両方のキーに属するコードを橋にして移れます。これをピボットコード(軸和音)と呼びます。
Cメジャーと Gメジャーのダイアトニックコードを並べると、C・Em・G・Am の4つが共通しています。
- Cメジャーでは vi の Am が、Gメジャーでは ii として働く
- 流れ:C → Am → D → G
Am の時点ではまだ Cメジャーに聞こえますが、次の D(Gメジャーの V)で「移った」と感じられ、G で落ち着きます。転調が不自然に聞こえるときは、このように共通コードを1つ挟めないかを探すのが手がかりになります。
まずは表の5つを鍵盤かギターで弾き比べ、共通音の数と「切り替わった感じ」の強さが対応しているかを耳で確かめてみてください。