音楽理論アレンジ

ダイナミクスとは — 静と動の対比で曲を立体的にする

ダイナミクス(dynamics)は、音楽の「強弱」と、その変化のことです。コード進行やメロディが同じでも、静かな部分と大きく鳴る部分の差があると、曲は平面ではなく立体に聞こえます。差を作る手段は音量だけではなく、音数・音域・リズムの細かさも同じ働きをします。

曲のパーツの呼び方はAメロ・Bメロ・サビとはで整理しました。この記事では、そのパーツ同士にどう高低差をつけるかに絞ります。

強弱記号の一覧

楽譜で強弱を指示する記号は、イタリア語の略記が使われるのが一般的です。

記号 読み 意味
pp ピアニッシモ とても弱く
p ピアノ 弱く
mp メゾピアノ やや弱く
mf メゾフォルテ やや強く
f フォルテ 強く
ff フォルティッシモ とても強く
cresc. / < クレッシェンド だんだん強く
decresc. / dim. / > デクレッシェンド・ディミヌエンド だんだん弱く
>(音符の上) アクセント その音だけ強く

バンドやDTMの現場では記号そのものを書かないことも多いですが、「Aメロは p、サビは f」のようにセクションごとに段階を決めておくと、アレンジの打ち合わせがしやすくなります。

静と動を作る4つの要素

音量のつまみを上げ下げしなくても、次の4つを動かすと強弱の差が生まれます。

要素 静(Aメロ向き) 動(サビ向き)
音量 弱く弾く・歌う 強く弾く・歌う
音数 楽器を減らす(ギター1本+歌) 楽器を足す(ドラム・ベース・コーラス)
音域 低め・狭い範囲 高め・広い範囲
リズム密度 全音符・2分音符で伸ばす 8分・16分で刻む

Cメジャーで同じ C → G → Am → F の進行を鳴らすとして、Aメロでは各コードを全音符1つで伸ばし、サビでは同じコードを8分音符で刻むだけでも、動いた感じがはっきり出ます。進行は変えず、リズム密度だけを変えた例です。テンポと音数の関係はBPMとテンポ感でも触れました。

4つの要素をいっぺんに全部動かすと差は大きくなりますが、途中の段階がなくなります。Bメロで音数だけを足し、サビで音域と音量を上げる、というように要素を1つずつ追加していくと、階段状に盛り上がる形が作れます。

セクションごとの配置例

J-POPでよく語られる配置を、強弱記号に置き換えて並べます。

セクション 強弱の目安 動かす要素
イントロ mf 曲の雰囲気を提示。楽器はそろっていてもよい
Aメロ p〜mp 音数を減らし、歌を前に出す
Bメロ mp〜mf 音数を少し足す。リズムを細かくし始める
サビ f 音域・音量・音数をそろえて上げる
2回目のAメロ mp 1回目より少し足す(同じにしない)
落ちサビ p サビの進行のまま、楽器を抜く
最後のサビ ff 落ちサビからの差で、一番大きく聞かせる

2回目のAメロを1回目と同じにせず少し足すのは、同じ段階を二度踏まないためです。1回目はギターと歌、2回目はベースとハイハットを足す、といった差で十分とされています。

落ちサビとブレイク

落ちサビは、最後のサビの直前に置かれる、楽器を減らした静かなサビのことです。コード進行とメロディはサビと同じまま、音数と音量を落とします。このあと全楽器が戻ると、同じサビなのに最後だけ大きく聞こえます。差を作るのは最後のサビの音量ではなく、直前をどれだけ下げたかです。

ブレイクは、1拍〜1小節ほど全楽器が止まる瞬間です。サビに入る直前の1拍を空けると、無音との差でサビ頭が強く聞こえます。アウトロ側の着地と組み合わせる考えかたはイントロとアウトロの作りかたに書きました。

作るときの手順

  • 曲の中で一番大きく鳴らす場所を1か所決める(たいていは最後のサビ)
  • そこを ff として、他のセクションを相対的に下げていく
  • 各セクションで4つの要素のうち何を動かすかを表に書き出す
  • 一番静かな場所(Aメロ1回目か落ちサビ)が、一番大きい場所と2段階以上離れているか確認する

全体を通して f のままだと、サビが大きく聞こえません。強い部分を作るより、弱い部分を作ることがダイナミクスの出発点になります。

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